FC2ブログ

2020-04

南波志帆 「ドラマチックe.p.」

南波志帆 「ドラマチックe.p.」■ アルバムデータ
タイトル:ドラマチックe.p.
アーティスト:南波志帆
リリース:2016年12月7日
レーベル:sparkjoy records

アルバム総評価:94


■ 曲目リスト
  №  曲          名評      価
01  月曜9時のおままごと            ★★★★★  
02  プールサイド★★★★★
03  セピア★★★★☆
04  華胥の夢★★★★★
05  polar express★★★★★
06  City Lights★★★★☆


■ 講評
今回紹介するアルバム「ドラマチックe.p.」は、新世代ガールズポップアイコンである 南波志帆 が2016年12月7日にタワーレコード内に設立した自身のレーベル sparkjoy records からリリースした2ndミニアルバムである。

本作は、この sparkjoy records から第一弾作品として2016年4月6日にリリースされた3rdフルアルバム「meets sparkjoy」からわずか8か月という短期間でリリースされたレーベル第二弾作品ともなっており、2016年12月19日付オリコン週間 CD アルバムランキングでは第103位を記録している。

なおレーベル名の「sparkjoy records」は、レーベルヘッドである 南波志帆 が自ら命名したもので、2016年1月のレーベル設立に際し、このレーベル名について「なかなか言い表せないけれど、誰もが感じる大切な愛おしい「ときめき」を音楽にしていきたくて、名付けました」と説明し、「新たなはじまりに、私はいま胸がときめいています」と自主レーベルの立ち上げに寄せる思いを語っている。

そんな 南波志帆 は、2012年12月5日リリースの2ndフルアルバム「乙女失格。」まで一貫して元 Cymbals のメンバーで 花澤香菜 への楽曲提供や CM 音楽制作でも知られる 矢野博康 のプロデュースの下で楽曲を作り続けてきたが、新レーベル sparkjoy records 設立後にリリースされた「meets sparkjoy」からは、心機一転、以前このブログでも紹介した THE CHARM PARK を始めとする若きサウンドクリエイターを中心とした作家陣と共にアルバムを制作し、これまでの音楽性を継承しながらも、新たなサウンドに果敢に挑戦している。

今回のミニアルバム「ドラマチックe.p.」も、津野米咲(赤い公園)、福永浩平(雨のパレード)、YeYe、フレネシ、ショック太郎(無果汁団)、そして前作「meets sparkjoy」でも多くの楽曲を手がけた THE CHARM PARK など、気鋭のサウンドクリエーター陣を迎えた意欲作となっており、南波志帆 自身のポップな側面が味わえるダンサブルなリード曲 #1「月曜9時のおままごと」や、南波志帆名義として作詞・作曲に初めて挑んだ、肌寒い季節にピッタリのバラード #3「セピア」など、個性豊かな楽曲で構成された煌びやかな全6曲が収録されている。

01:月曜9時のおままごと[作詞・作曲:津野米咲]
02:プールサイド[作詞・作曲:YeYe]
03:セピア[作詞:南波志帆 / 作曲:THE CHARM PARK、URU、南波志帆]
04:華胥の夢[作詞:フレネシ / 作曲:ショック太郎]
05:polar express[作詞: fifi leger、THE CHARM PARK / 作曲:THE CHARM PARK]
06:City Lights[作詞・作曲:福永浩平]

そのアルバムジャケットは、レコード世代には懐かしい昔のドーナッツ盤のレコードカヴァーを想わせるシンプル・レトロなデザインで、雑誌「装苑」の表紙で知られるアートディレクター、グラフィックデザイナーの 千原徹也 が代表を務めるデザインオフィス「株式会社 れもんらいふ」によるアートワークとなっており、2011年7月20日リリースの1stアルバム「水色ジェネレーション」のジャケットに 南波志帆 の後姿に扮して登場している人物で、エレクトロポップユニット ふぇのたす のボーカル みこ がユニット解散後に立ち上げたソロプロジェクト SHE IS SUMMER の「ラブリー・フラストレーション EP」のアートワークも手掛けた同社デザイナーである 永瀬由衣 が制作を担当。

南波志帆 と 永瀬由衣 のコラボレーションは「水色ジェネレーション」以来ということで、乙女心をくすぐる、少女マンガのようなシンプルなデザインともなっており、前作である北欧テイストのキュートなコラージュアートがヴィヴィッドな「meets sparkjoy」のアルバムジャケットとは、大きく趣きを異にしたデザインとなっている。

▼「ドラマチックe.p.」
画像



またタワーレコードの YouTube 公式チャンネルでは、本作のリードトラックにして 津野米咲(赤い公園)によって書き下ろされたポップチューン「月曜9時のおままごと」のミュージックビデオが公開されており、監修は、アルバムジャケットを手掛けた「れもんらいふ」が担当。

軽快なリズムに合わせてテンポよく変化するシチュエーションの中で、南波志帆 のあらゆる表情をとらえた遊び心あふれる内容となっているという映像には、「れもんらいふ」の代表 千原徹也 や SHE IS SUMMER(MICO)も出演しており、この二人による超微妙な小芝居もかなりユニークな作品となっている。

▼ 南波志帆
画像



さて、南波志帆 といえば、ロリータチックで二次元ライクな独特の甘酸っぱいヴォーカルと、そのヴォーカルの魅力を存分に活かした名プロデューサー 矢野博康 による弾けるようなエレクトリックポップが印象的なシンガーとして知られているが、特に彼女の楽曲は、フルカラーの明るいポップサウンドにどことなく哀愁漂うセピアカラーな切ない雰囲気も合わせ持った他のポップシンガーとは一線を画す不思議な魅力を持っており、その唯一無二的な独自性が彼女にとって大きなアドバンテージになっているようだ。こうした 南波志帆 の魅力やイメージは、本人自身の魅力もさることながら、活動初期から音楽プロデュースを担当してきた 矢野博康 の力量によるところも大きいと思われる。

そうしたある意味 南波志帆 のサウンドの礎を築いた 矢野博康 から離れて初めて制作されたのが、前作となる3rdフルアルバム「meets sparkjoy」である。

▼「meets sparkjoy」
画像



「meets sparkjoy」は、Tore Johansson、持田香織(Every Little Thing)、tofubeats、吉澤嘉代子、THE CHARM PARK など、個性派揃いの制作陣が楽曲を提供。こうしたサウンドクリエーター陣の変更に伴いそれまでの 南波志帆 が持っていたサウンドカラーにも少なからず変化があったようで、南波本人がよりシティーポップなサウンドを指向したという楽曲群は、緻密かつ硬質で、ストレートな音を意識して制作されているように感じられる。

ただ、そうした新たな試みによってこれまでにない 南波志帆 の魅力が引き出されたかといえば、残念ながら必ずしもそうではなかったというのが正直な感想であり、リスナーのレビュー等を見る限り、聴き込むほどにハマる傑作といった肯定的な評価も多い一方で、私と同じように何となくしっくりこない「違和感」を覚えたという趣旨の意見も散見された。

個人的には、サウンドクリエーターである Tore Johansson や THE CHARM PARK の特徴とも言える派手さのない落ち着いた感じのヨーロピアンレトロなサウンドが、彼女のヴィヴィッドでハッピーメイクなヴォーカルとうまくシンクロできていないことが、そうした「違和感」に繋がっていると感じたが、改めてスウェーデンの音楽プロデューサーである Tore Johansson が手掛けた代表作である Cardigans のアルバム「Emmerdale」を聴くと、そのサウンドカラーは、彼がプロデュースを手掛けた 原田知世 や 遊佐未森 のアンニュイな声質にはよく馴染むものの、南波志帆 の艶めいてハリのあるヴォーカルには少しミスマッチではないかと思うのである。

サウンドクリエーターの顔ぶれを見ると、南波志帆 の狙いや目指そうとしているサウンドの方向性は何となく理解できるのであるが、矢野博康 のサウンドイメージが強烈な分、その固定化されたイメージを払拭するために新しい個性をどれぐらい取り込むかのさじ加減は、非常に難しいと感じた。

南波志帆 自身、「meets sparkjoy」のリリースに当たり、それまで「南波志帆」を演じていた自分からの脱却を意識したとかなりドラスティックな発言をしており、新レーベルの立上げを契機に 矢野博康 から卒業して新たなサウンドに果敢に挑戦したことは大英断であったと思うのだが、産みの苦しみとでもいうのであろうか、さすがに 矢野博康 から離れて第一弾目の作品となるフルアルバム「meets sparkjoy」で、いきなり今後の目指すべき音楽の方向性について明確な答えを見つけ出すことは難しかったようだ。

ただ、そうした1ファンの実に個人的な感想を尻目に、結果的に「meets sparkjoy」は、2016年04月18日付オリコン週間 CD アルバムランキングで第45位を記録し、2ndフルアルバム「乙女失格。」の第66位を上回る結果を残しており、3年4か月振りのフルアルバムリリースというニュースバリューを差し引いても、多くのリスナーに概ね好意的に受け入れられたようである。その意味で 南波志帆 本人にとっても、新レーベルの下で彼女が目指すべき音楽の方向性を占う絶好の試金石となったかもしれない。

▼ 南波志帆
画像



そんな前作から僅か8か月でリリースされた「ドラマチックe.p.」は、アルバムジャケットの変化が前作との違いを如実に物語っているようで、本人が「ドラマチックに、繊細に、日常の機微を切り取った作品になりました。ときめきの本質、みたいなイメージです。理想と現実の狭間でゆらゆら、キラキラと揺れ動く、女の子の気持ちが詰まっています。この冬、ドラマチックなときめきをあなたに。」とコメントするように、大方の予想に反して「乙女失格。」や「水色ジェネレーション」のガーリーでドラマチックなサウンドを彷彿とさせる以前の「南波志帆」のような内容となっており、期待以上の仕上がりであると感じた。

ミニアルバムながら全体に原点回帰を意識したようなアップテンポでポップ&ポップな楽曲が絶妙にラインアップされており、いかにも 南波志帆 らしい哀愁を帯びたサウンドも健在で、多くのサウンドクリエーターが参加しながらも非常に統一感の取れたアルバムとなっており、今回のようなアルバムを期待していたファンも少なくないのではないだろうかと勝手に思い込んでいる次第である。

特にタイトルからしていかにも 南波志帆 らしい #1「月曜9時のおままごと」は、ワクワク感マックスのキャッチーなメロディも秀逸で、エレクトリックなリズムもリードトラックに相応しいアッパーチューンとなっている。また、南波志帆名義で初めて作詞・作曲に挑戦したという #3「セピア」もなかなかの出来栄えだと感じたが、歌詞については若干浅い感じで今一歩といったところだろうか。

いずれにせよ個人的には、南波志帆 が今後も今回のミニアルバムのようなサウンド感をキープしてくれることを大いに期待したいところだ。過去の「水色ジェネレーション」や「乙女失格。」は、確かにいずれも 矢野博康 色の濃いアルバムではあるが、同時に 南波志帆 だからこそ成立した「シンガー 南波志帆」の魅力満載のアルバムでもある。

シンガーとしての経験を積む中で自身のサウンドに対しても良きにつけ悪しきにつけ様々な思いを抱き、葛藤する中で、アルバム制作においても自分らしさを存分に発揮したいと思うことは至極当然なことだろう。同時に、だからといってこれまでに培われた魅力的なサウンドカラーを無下に払拭する必要はないとも思うのだが、いかがであろうか。

恐らく 矢野博康 サウンドを越えるためには相当の覚悟と決意が必要であろう。だからこそ 南波志帆 は、sparkjoy records 設立を機に自然体で自分らしい「南波志帆」として生まれ変わるべく、敢えて音楽制作においても独り立ちを選択したのである。その船出の曳航に気鋭の個性派サウンドクリエーターの力を借りることは、ファンとしても大いに賛同できるところであろう。

その結果として本作のような過去のサウンドカラーを否定することなくリビルドしたサウンドが生まれるのであれば、ファンとしてこれ以上喜ばしいことはなく、南波志帆 の選択は決して間違いではなかったと素直に思えるに違いない。

▼ 南波志帆
画像




■ Music Video「月曜9時のおままごと」
Director:千原徹也、永瀬由衣(れもんらいふ)
Camera:須藤中也
Stylist:井上かおり
Hair & Make Up:山本りさ子




*この動画で使用されている音源は、動画を Youtube にアップロードした TOWER RECORDS が自ら制作したものであり、個人が収入(広告収入を含む)を得ずに運営するサイトへの貼り付けが許諾された音源です。


love3  最後まで御覧いただきありがとうございました。よろしければ1拍手いただけるとうれしいです。


スポンサーサイト



  

● COMMENT FORM ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://758ongakudohonpo.blog.fc2.com/tb.php/308-1aa7b38e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Kenny Rogers 「They Don't Make Them Like They Used To」 «  | BLOG TOP |  » つるうちはな 「LOVE」

プロフィール

香山蔵之介

Author:香山蔵之介
名古屋音楽堂本舗の店主香山蔵之介による音楽講評です。
Life is music. Music is life.
Let's enjoy music for your wonderful life.

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

邦楽(あ行) (32)
邦楽(か行) (25)
邦楽(さ行) (31)
邦楽(た行) (12)
邦楽(な行) (10)
邦楽(は行) (25)
邦楽(ま行) (5)
邦楽(や行) (11)
邦楽(ら行) (9)
邦楽(わ行) (2)
洋楽(あ行) (19)
洋楽(か行) (10)
洋楽(さ行) (29)
洋楽(た行) (11)
洋楽(な行) (0)
洋楽(は行) (18)
洋楽(ま行) (4)
洋楽(や行) (1)
洋楽(ら行) (14)
洋楽(わ行) (1)
洋画(か行) (2)
洋画(は行) (1)
アート (6)
文化 (13)
ファッション (1)
グルメ (7)
PC (1)
健康 (1)
BLOG (3)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

アクセス数

オンライン数

現在の閲覧者数:

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブログランキング

ブログランキング参加中


ブログランキング参加中

Please Click !