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2020-05

Roberta Flack 「I'm the One」

Roberta Flack 「I'm the One」■ アルバムデータ
タイトル:I'm the One
アーティスト:Roberta Flack
リリース:1982年5月1日
レーベル:Atlantic Records

アルバム総評価:96
crown01《名音堂 Gold Disc 認定》


■ 曲目リスト
  №  曲          名評      価  MV  
01  I'm the One  ★★★★☆  youtube02
02  'Til the Morning Comes(朝が来るまで…)        ★★★★★
 
03  Love and Let Love★★★★★ 
04  Never Loved Before★★★★★ 
05  In the Name of Love★★★★★ 
06  Ordinary Man★★★★☆ 
07  Making Love★★★★★youtube02
08  Happiness★★★★★ 
09  My Love for You★★★★★ 

※( )は日本語タイトル

■ 講評
今回紹介するアルバム「I'm the One」は、アメリカのシンガーソングライター Roberta Flack が1982年5月1日に Atlantic Records からリリースした10thスタジオアルバム(ソロとしては8thアルバム)である。全て新曲による9曲を収録。ソロアルバムとしては、前作となる1978年リリースの「Roberta Flack」(邦題:「愛の絆」)以来、4年振りのリリースとなる。なお、Roberta Flack の詳細については、5thアルバム「Killing Me Softly」の講評を参照いただければ幸いである。

ちなみにリリース当時の日本盤 LP の帯には、「朝、また恋人達のセンチな別れが、ふと流れるラブ・ソングとともに始まろうとしている……愛という文字に刻み込まれたストーリーを見事なまでに表現してくれたロバータ・フラック、待望のニュー・アルバム。」と非常にクサいコピーが記されていた。

レコーディングは、ニューヨークの Rosebud Recording Studio、ストリングスのレコーディングは、同じくニューヨークの A&R Recording Studio と別々のスタジオで収録。

アルバムプロデュースを、弦楽器の世界的なデザイナー/ビルダーで名アレンジャーでもある William Eaton、1980年の Grover Washington Jr.のグラミー賞受賞アルバム「Winelight」のプロデュースを手掛けた名パーカッショニスト Ralph MacDonald、その Ralph と共に音楽出版社「Antisia」を設立し数々の名盤を世に送り出したことでも知られる William Salter、そして Roberta Flack 本人の4人が共同で行っており、唯一 #07「Making Love」のみ Burt Bacharach と Carole Bayer Sager がプロデュースを行っている。ちなみに Ralph MacDonald と William Salter は、1972年に Roberta Flack と Donny Hathaway のデュエット曲「Where Is the Love」を作曲してグラミー賞「Best Pop Performance by a Duo or Group with Vocals」を受賞しており、以前から Roberta Flack との関わりも深い音楽家である。

アルバムアレンジを、プロデューサーの一人である William Eaton が、プロデュース・コーディネーターを、Jacklyn Brown、Janaire Boger、Kirk D. Fancher、Renee Bell が担当。アート・ディレクションを、Bill Evans Trio から Bee Gees、Eric Clapton に至るまで様々なアーティストのアートディレクションを担当した有名アートディレクター Bob Defrin が、ジャケットの表裏一体の印象的なバラのイラストレーションを、幻想的な作風のイラストレーションで主にアメリカで活躍し、世界的な影響力を持つといわれる数少ない日本人女性イラストレーター Kinuko Y. Craft が担当している。

またバックミュージシャンには、今やジャズ・フュージョン界の大物ベーシストとなった Marcus Miller(Bass)、Gadd を God とかけて「ドラムの神」の異名を持つ 名セッションドラマー Steve Gadd(Drums)、1970年代後半にフュージョンバンド Stuff のピアニスト、キーボーディストとして活躍した Richard Tee(Electric Piano)、音楽業界においては伝説の人、偉大なギタリストでありギターの神様と言い伝えられているアメリカを代表するセッション・ギタリスト Eric Gale(Guitar)、Bob Dylan や Steely Dan とのセッションでも知られるなピアノスト Paul Griffin(Synthesizer)、Ralph MacDonald(Percussion)ら、今では再現不可能な超豪華メンバーが参加。

更にバックヴォーカルには、 Chic のバックヴォーカルでも知られる Diva Gray、ソロシンガーとしても活動した Frank Floyd、David Sanborn や Michael Franks のアルバムにも参加している Kasey Cisyk、Vivian Cherry、William Eaton、Zack Sanders らが参加している。

本作は、U.S.Billboard 200 第59位と残念ながらマイナーヒットに終わり、前作「Roberta Flack」に続いて芳しい成績を残すことができなかったが、U.S.Billboard R&B/Hip-Hop Albums Chart では第16位と健闘。こうしたチャートの成績からも窺えるように、全般的にアダルトコンテンポラリーな楽曲が多く、落ち着いた渋い雰囲気の作品となっている。

▼「I'm the One」
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▼「I'm the One」ジャケット裏面
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▼「I'm the One」見開きイラスト
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▼「I'm the One」LP盤ラベル
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本作からは、「Making Love」、「I'm the One」、「In the Name of Love」の3曲がシングルカットされており、1982年2月8日に第一弾シングルとして先行リリースされた「Making Love」は、B面に1973年リリースの5thアルバム「Killing Me Softly」収録の Janis Ian の名曲のカヴァー「Jesse」(邦題:「我が心のジェシ」)をカップリング。

1982年の同タイトルのアメリカ映画「Making Love」の主題歌として Burt Bacharach、Bruce Roberts、Carole Bayer Sager が作曲し、Burt Bacharach と Carole Bayer Sager がプロデュースしたこのシングルは、 U.S.Billboard Hot 100 第13位、U.S.Billboard Top R&B/Hip-Hop Albums 第29位、U.S.Billboard Adult Contemporary Chart 第7位を記録するヒットとなったが、残念ながらこの楽曲がソロとして U.S.Billboard Hot 100 Top40 入りした最後の楽曲となった。

なお、ギターにはジャズ・フュージョン界の名ギタリストにして2005年に日本のミュージシャン杏里と婚約も発表(ただし、2008年には破局)した日本でもお馴染みの Lee Ritenour が参加しているほか、Neil Steubenhaus(Bass)、Jim Keltner(Drums)、Bruce Swedien(Engineer)、Paulinho DaCosta(Percussion)、Richard Tee(Piano)、Burt Bacharach(Synthesizer)、Craig Huntley(Synthesizer)など豪華一流ミュージシャンが参加している。

▼「Making Love」US盤
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▼「Making Love」日本盤
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続くアルバムリリース直後の1982年5月4日に第二弾シングルとしてリリースされた「I'm the One」は、B面にアルバム収録曲「'Til the Morning Comes」(邦題:「朝が来るまで…」)をカップリング。

William Eaton、Ralph MacDonald、William Salter が作曲したこのアルバムタイトル曲は、U.S.Billboard Hot 100 第42位、U.S.Billboard R&B Chart 第24位、U.S.Billboard Adult Contemporary Chart 第10位と第一弾シングル「Making Love」同様健闘したが、こちらも残念なことに、この楽曲がソロとして U.S.Billboard Hot 100 入りした最後の楽曲となった。

なお Roberta Flack は、この楽曲以降ソロとしてはヒットチャートを賑わすことはなくなるが、デュエットで新境地を開拓。1983年には Peabo Bryson とのデュエット曲「Tonight, I Celebrate My Love」で U.S.Billboard Hot 100 第16位、「You're Looking Like Love to Me」で第58位を、また 1991年には Maxi Priest とのデュエット曲「Set the Night to Music」で U.S.Billboard Hot 100 第6位を記録しており、その貫禄と実力の程を示している。

▼「I'm the One」US盤
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▼「I'm the One」Spain盤
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1982年10月4日に本作からの最後のシングル「In the Name of Love」をリリース。B面にはアルバム収録曲「Happiness」をカップリング。

Ralph MacDonald、William Salter、Bill Withers が作詞・作曲したこのシングルは、U.S.Billboard Top R&B/Hip-Hop Albums 第80位、U.S.Billboard Adult Contemporary Chart 第24位を記録したが、残念ながら U.S.Billboard Hot 100 にはランクインしなかった。

▼「In the Name of Love」US盤
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なお、シングルカットこそされていないものの、収録曲の内 #04「Never Loved Before」は、Bobby Caldwell と Henry Grumpo Marx が、また #06「Ordinary Man」は、Peabo Bryson が作曲した楽曲であり、これら有名シンガーソングライターのサウンドカラーがアルバムのポップテイストなサウンド感に少なからず影響を与えているようだ。また、#05「In The Name Of Love」と #09「My Love For You」で流れる魅惑的なソプラノサックスは、ジャズ・フュージョン界を代表するサックス奏者 Grover Washington, Jr.のソロプレイによるもので、このサックスがあるだけで楽曲全体に非常にメロウ・グルーヴなサウンド感が漂っており、改めて Grover Washington, Jr.の貫禄を感じさせる楽曲となっている。

(出典:「I'm the One (Roberta Flack album)」(18 April 2016 23:08 UTC) 『Wikipedia英語版』他)

▼ Roberta Flack
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さて、本作は Roberta Flack の中後期のアルバムであり、活動初期の人気に陰りが見える中でサウンド的には円熟味を増すとともに、従来から持っていたポップテイストなサウンド指向にも拍車がかかって、人気コンポーザーがライティングしたヒット性の高いメロディアスな楽曲も多くラインアップされた、非常に聴き応えのあるアルバムに仕上がっている。

ただ、それまでのアルバムと比べて、「Killing Me Softly with His Song」や「Feel Like Makin' Love」のような大ヒット曲は収録されておらず、比較的地味な印象のアルバムとなっており、リリース当時もチャート的には芳しい成績を残すことができなかったようだ。

また、シングルリリースされた3曲もある程度の成績を残したものの、メインチャートである U.S.Billboard Hot 100 では、「Making Love」の第13位を最高に「I'm the One」が第42位、「In the Name of Love」に至ってはランキング外と極めて残念な成績に終わっている。

U.S.Billboard のシングルチャートである Hot 100 におけるヒット曲の目安は「Top40」と言われており、これらの成績は、Roberta Flack 本人にも非常に厳しい現実として受け止められたのではないかと思われる。また、チャート上での成績不振と併せてアルバム自体の売上げ枚数も伸びず、不振であった前作「Roberta Flack」同様、アメリカレコード協会からシルバーディスクにさえ認定されることはなかった。

Roberta Flack は、これ以降ソロによるシングルで U.S.Billboard Hot 100 入りすることもままならなくなるのだが、ある意味、このアルバム「I'm the One」が、その内容の充実度に反してヒットチャート常連としての人気に終わりを告げる節目のアルバムとなってしまったことは、極めて残念でならない。

▼ Roberta Flack
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個人的には Roberta Flack のアルバムの中でも、特にこのクワイエット・ストームなアルバムを気に入っており、Roberta Flack の持ち味を活かしたソフトで優しく、落ち着いた雰囲気のアダルトコンテンポラリーなポップ/R&B な楽曲が非常に心地良く、特に「Never Loved Before」は、「Killing Me Softly with His Song」を彷彿とさせる哀愁漂う名バラッドとしてファン必聴の楽曲となっており、Roberta Flack のキャリアの中でも外せない一枚と言えるだろう。

いいアルバムが必ずしも売れるアルバムではないということを象徴するようなアルバム「I'm the One」であるが、「I'm the One」の意味は「私は私」とか「私自身」とかいったところであろうか。あくまで結果論ではあるが、このアルバムを取り巻く環境を考えると、非常にアイロニックなタイトルと思えなくもない。

なお、この翌年、Roberta Flack は Peabo Bryson とのデュエットアルバム「Born to Love」をリリースし、新境地を開拓することになる。元々 Donny Hathaway とのデュエットで定評のあった Roberta Flack ではあるが、よりエレクトリックで AOR な Peabo Bryson のサウンドカラーをうまく取り込んで、「Born to Love」では「Tonight, I Celebrate My Love」というデュエットソングの名曲を生み出すことになるのだが、そのバラッドの名盤「Born to Love」については、ぜひ別の機会に御紹介させていただきたいと考えている。

アルバム「I'm the One」はヒットこそしなかったものの、Roberta Flack の洗練された音楽性が際立つファンの間では非常に評価の高い隠れた名盤であり、ハートウォームな Roberta Flack サウンドを存分に堪能できるアルバムとして、個人的には今でもよく聴くお気に入りの一枚となっている。

この講評を記するに当たり改めて「I'm the One」を聴いたが、このアルバムがリリースされた当時はまだ45歳であった Roberta Flack も、今や御年79歳ということであり、改めて歳月の流れを感じずにはいられない。

▼ Roberta Flack
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*この記事は、クリエイティブ・コモンズ・表示・継承ライセンス3.0のもとで公表された Wikipedia の項目「 I'm the One (Roberta Flack album)」を素材として二次利用しています。


love3  最後まで御覧いただきありがとうございました。よろしければ1拍手いただけるとうれしいです。


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Author:香山蔵之介
名古屋音楽堂本舗の店主香山蔵之介による音楽講評です。
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