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2020-05

Laura Branigan 「Self Control」

Laura Branigan 「Self Control」■ アルバムデータ
タイトル:Self Control
アーティスト:Laura Branigan
リリース:1984年4月
レーベル:Atlantic Records

アルバム総評価:94


■ 曲目リスト

  №  曲          名評      価  MV  
01  The Lucky One  ★★★★★  youtube02
02  Self Control★★★★★
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03  Ti Amo★★★★☆youtube02
04  Heart★★★★★youtube02
05  Will You Still Love Me Tomorrow          ★★★★★youtube02
06  Satisfaction★★★★★youtube02
07  Silent Partners★★★★★
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08  Breaking Out★★★★★youtube02
09  Take Me★★★★★youtube02
10  With Every Beat of My Heart★★★☆☆youtube02


■ 講評
今回紹介するアルバム「Self Control」は、アメリカの女性シンガーである Laura Branigan が1984年に Atlantic Records からリリースした3rdスタジオアルバムである。全10曲を収録。また2013年には、Gold Legion から「The Lucky One」、「Satisfaction」、「Self Control」のリミックスヴァージョンを加えた14曲収録のリマスター盤がリリースされている。

本作は、Laura Branigan のアルバムのうち商業的に最も成功したアルバムであり、U.S.Billboard 200 第23位、UK Albums Chart 第16位を記録。アメリカ国内で1千万枚以上を売り上げてアメリカレコード協会(RIAA)からプラチナディスクにも認定され、ワールドワイドに数千万枚を売り上げた名盤である。

アルバムプロデューサーは、Laura Branigan の1stアルバムから4thアルバムまでを担当したドイツ出身の音楽プロデューサー Jack White と、Bette Midler 主演の1978年映画「The Rose」にピアノプレイヤーとして出演した経験もあるカナダ人キーボード奏者・プロデューサー Robbie Buchanan が、アレンジャーは、Harold Faltermeier(#1,#2,#3,#6,#10)と Robbie Buchanan(#3,#5,#7-#9)がそれぞれ担当している。

またレコーディングエンジニアは、Jurgen Koppers が担当し、レコーディングは、Image Recording Inc. (Los Angeles, California)、Music Grinder (Los Angeles, California) 、Arco Studios (Munich, Germany)で行われた。

スタジオミュージシャンには、プロデューサーである Robbie Buchanan(synthesizer,piano)を始め、Background Vocals に Chicago のメンバー Bill Champlin、Rick Springfield や REO Speedwagon のレコーディングにも参加した Tommy Funderburk、Mr. Mister のメンバー Richard Page と Steve George、1984年の Madonna のヒット曲「Like a Virgin」の共作者としても有名な Thomas Kelly、Sergio Mendes のヒット曲「Never Gonna Let You Go」でヴォーカルを務めた Joe Pizzulo、Bass にジャズ・フュージョンをメインに活動し「世界最高峰のベーシスト」とも評される Nathan East、Drums に Quincy Jones のサポートで知られる John "J.R." Robinson、Synthesizer に1984年の映画「Beverly Hills Cop」のサウンドトラックでグラミー賞を受賞した Harold Faltermeyer、Guitar にジャズ・フュージョンギタリストで Michael Jackson のサポートでも知られる Paul Jackson Jr.、浜田麻里、氷室京介、松任谷由実など日本人ミュージシャンの作品にも数多く参加するなど人気スタジオ・ミュージシャン Michael Landau、カントリーミュージックの名プロデューサーとして知られる Dan Huff、Saxophone(#9)に Sheila E. の「The Glamorous Life」の印象的なソロサックスプレイで知られる Larry Williams と、錚々たる超一流ミュージシャンが参加している。

ちなみに当時の日本盤 LP の帯コピーは、「聴いてみたい、見つめてたい、抱きしめたい・・・・・あげる。彼女のすべてを。ローラのニュー・アルバム。愛しい女を感じます。」とチープなコピーながらも Laura Branigan の印象を反映した艶っぽい表現となっていた。

▼「Self Control」
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▼「Self Control」ジャケット裏面
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▼「Self Control」LP盤ラベル
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アルバム収録曲全10曲中、1984年に「Self Control」、「The Lucky One」、「Ti Amo」、「Satisfaction」の4曲がシングルカット。

この内、第1弾シングルあるアルバムタイトル曲「Self Control」は、アルバムに収録されたイタリアの楽曲のカヴァー曲2曲の内の1曲で、自身最大の世界的ヒット曲となった。ちなみにもう1曲は、1977年に Umberto Tozzi がリリースしたイタリアの作曲家 Umberto Tozzi と Giancarlo Bigazzi の共作によるオリジナル曲をベースに、アメリカの人気作曲家 Diane Warren が歌詞を書いた「Ti Amo」である。

「Self Control」は、それまでに Laura Branigan がカヴァーしたイタリアの楽曲4曲の内、唯一オリジナル曲も歌詞が英語で、Laura Branigan はその歌詞を変えることなくオリジナル通りにレコーディングすることを選択。また他の3曲と異なり、カヴァーとオリジナルが同時期にリリースされたことも特徴的であった。

オリジナルの「Self Control」は、Giancarlo Bigazzi、Steve Piccolo、Raf が作曲、1984年にイタリア人歌手 Raf(Raffaele Riefoli)がリリースした楽曲である。それをイタリアの音楽プロデューサー・シンセサイザー奏者である Giorgio Moroder 門下の Harold Faltermeyer と Robbie Buchanan がアレンジし、Robbie Buchanan と Jack White がプロデュースしたもので、オリジナル曲のメロディラインで使用されたキーボードはギター・リフに、またヴォーカルアレンジも大幅に変更されている。

歌詞には、「livin' only for the night(夜の間だけ生きていられる)」や「live among the creatures of the night(夜の不気味な生き物たちに囲まれて私は生きている)」といった夜の甘美な世界へ誘う魅惑的なフレーズが用いられ、「you take my self, you take my self-control(あなた(夜の世界の誘惑)は私を連れ去り、私の自制心をも奪っていく)」と誘惑と自制心(self-control)の葛藤を唄ったエロティックな想像を掻き立てるアダルトな内容となっている。

こうした歌詞の世界観を反映したミュージックビデオは、1971年の映画「The French Connection」や1973年の映画「The Exorcist」の監督でアカデミー賞受賞映画監督でもある William Friedkin が制作。ニュージャージー州とニューヨークで撮影され、映画「The Godfather」のプロデュースで知られる Fred Caruso がプロデュースして1984年4月に初放映。ベッドに横たわる恋人の隣で Laura Branigan がソファーに寝そべる描写から始まり、都会の夜の魅力に誘われた Laura Branigan が着飾って夜の街へ繰り出し、そこで出会った白仮面の謎の男にナイトクラブの地下で繰り広げられる酒池肉林のパーティーに導かれるものの、恐ろしくなって逃げ出しやっとのことで家に逃げ帰ったところ、再び仮面の男がベッドルームに現れて、彼女は結局その男に身を委ねてしまう、というストーリー性を持った内容で、気を失って床に倒れている Laura Branigan をおいて仮面の男は朝の光の中に消えていくのだが、ベッドの恋人が振り返ると先程の謎の男と同じ白仮面を被っていた、というミステリアスなエンディングで終わる映像となっている。

ところが、この映像内容が倫理規範に厳しいアメリカで問題となり、MTV では編集なしで放映するにはあまりに過激でセクシー過ぎるとして放映禁止となってしまう。結果的に Laura Branigan が不本意ながらレコード会社の説得を受け入れ、内容を微修正することで MTV でも放映され、「Self Control」はチャートを急上昇。1985年、アメリカの音楽賞の1つ「アメリカ音楽賞」(The American Music Awards)の最も好きな女性ポップ・ロックビデオアーティスト部門に Tina Turner、Cyndi Lauper(受賞者)とともにノミネートされることになる。

ビデオ騒動も手伝ってか、アメリカでは U.S.Billboard Hot 100 第4位を記録し、1年半に渡って「Gloria」、「Solitaire」、「How Am I Supposed to Live Without You」に続いて4シングル連続で U.S.Billboard Top10 入りを果たすという快挙を達成。その他 U.S.Billboard Hot Dance Club Play Chart 第2位、U.S.Billboard Adult Contemporary Chart 第5位と大ヒットを記録する。また、ワールドワイドにもヒットして、オーストリア、カナダ、スウェーデン、南アフリカのチャートで第1位を獲得し、1984年5月には、ドイツの GfK Entertainment Charts で Raf のオリジナルヴァージョンと同時に Top20 入りを果たしている。

▼「Self Control」US盤
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▼「Self Control」UK盤
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▼「Self Control」日本盤
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第2弾シングル「The Lucky One」は、Bruce Roberts 作曲、Jack White プロデュースによる楽曲で、U.S.Billboard Adult Contemporary Chart 第13位、U.S.Billboard Hot Dance Chart 第10位を記録。また U.S.Billboard Hot 100 第20位を記録し、自身5枚目となる U.S.Billboard Hot 100 Top20 入りシングルとなった。更に1984年4月に開催された第13回東京音楽祭で世界大会グランプリを受賞し賞金3千万円を獲得するなど、日本でも大ヒット。1983年のテレビ映画「An Uncommon Love」でもテーマ曲として使用されている。

▼「The Lucky One」
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▼「The Lucky One」日本盤
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第3弾シングル「Ti Amo」は、Giancarlo Bigazzi と Umberto Tozzi が共作し、1977年にイタリアのシンガー Umberto Tozzi がアルバム「E nell'aria...ti amo」からシングルカットしたヒット曲に、女性作曲家である Diane Warren が英語の歌詞を付けてカヴァーした楽曲である。アメリカでは U.S.Billboard Hot 100 第55位、U.S.Billboard Hot Adult Contemporary Tracks 第22位とマイナーヒットに終わったが、Australian Singles Chart で第2位、Canadian Singles Chart で第5位を記録するなど海外では大ヒット。後に Laura Branigan は、イタリアのテレビ番組で本家の Umberto Tozzi のギター演奏で Laura Branigan ヴァージョンの「Ti Amo」をパフォーマンスしている。

▼「Ti Amo」
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▼「Ti Amo」日本盤
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第4弾シングル「Satisfaction」は、Bernd Dietrich、Gerd Grabowski、Engelbert Simons が作曲、アメリカの作曲家 Mark Spiro と売れっ子女性作曲家 Diane Warren が作詞した楽曲で、アルバムと同じく Jack White と Robbie Buchanan がプロデュース。元々ダンスクラブでのヒットを念頭にリリースされた楽曲であったため、アメリカでも広範にはリリースされず、最初はプロモ-ション用の12"シングルのみのリリースであったが、その後通常の12"シングルもリリースされ、ドイツやフランスでは 7"シングルもリリースされている。このため、チャート的には U.S.Billboard Dance Music/Club Play Singles Chart で第24位を記録したのみで、ミュージックビデオも制作されなかった。

▼「Satisfaction」
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Laura Branigan と言えば、硬質なビブラートのかかる5オクターブとも言われる広い音域とパワフルで圧倒的な声量、大柄な体格を生かしたダイナミックなステージアクションで人気を博した実力派シンガーで、その独特の哀愁を帯びた艶のあるヴォーカルで日本でも人気を博し、特にアルゼンチンなどのラテン・アメリカ、南アフリカでの人気は絶大だったことでも知られている。また、元々 Barbra Streisand に憧れてミュージカルを志し、演劇学校に通っていたこともあって、その美貌には定評があり、映画やテレビドラマ等の出演作も多数あるマルチに活躍したシンガーソングライターだ。

同時代に活躍した Madonna、Pat Benatar、Kim Carnes、Bonnie Tyler らと並び1980年代のロック・ポップシーンを代表する女性シンガーで、ヒット曲にはヨーロッパサウンドの影響を受けたシンセポップミュージックが多いが、改めて初期のアルバムを聴き直してみると、そのサウンドの根幹に流れるのは、紛れもなくロックであることがよく分かって興味深い。

だが、いわゆる明快なアメリカンロックとは異なり、彼女のイメージとしてよく言われるところの物憂げな哀愁漂うヨーロッパカラーの妖艶で大人なイメージのポップロックが多く、そうしたサウンドカラーは、当時活躍した他の女性ロック・ポップシンガーの中でも非常に異色であった。

こうしたイメージは、1stから4thアルバムまでのプロデュースを手掛けたドイツ出身の Jack White によって形作られたと言っても過言ではないだろう。1970年代から80年代にかけてはそもそもまだ女性のロックミュージシャンが少なかった時代であり、そうした中でスターダムにのし上がるためには、実力本位であることはもちろんのこと楽曲自体の注目度も重要な要素であり、その点においてイタリアのヒット曲を積極的にカヴァーした Jack White のある意味奇をてらった戦略は、見事狙いどおりの成果を上げたと言えるだろう。

一方でアルバム「Self Control」がリリースされた1984年当時の U.S.Billboard Hot 100 を見ると、生粋のアメリカンロックがチャート上位にひしめいており、イタリアのヒット曲のカヴァーである「Self Control」は非常に異色な存在で、そうしたヨーロピアンな雰囲気が漂う楽曲を歌う Laura Branigan 自体も、もしかすると王道を行くロック・ポップシンガーとは多少違った目で見られていたのかもしれない。そのことは Jack White が彼女のプロデュースから外れた5thアルバム以降、人気が下降線をたどった事実からも推察されるのではないかと感じる。

ちなみにシングル「Self Control」が第4位を記録した1984年6月30日週の U.S.Billboard Hot 100 のチャートは、以下の通りとなっており、第1位の Duran Duran はさておき、当時のアメリカン・ロックの勢いを感じさせるラインアップとなっている。

01:The Reflex(Duran Duran)
02:Dancing In The Dark(Bruce Springsteen)
03:When Doves Cry(Prince)
04:Self Control(Laura Branigan)
05:Jump (For My Love)(Pointer Sisters)
06:The Heart Of Rock & Roll(Huey Lewis and the News)
07:Time After Time(Cyndi Lauper)
08:Eyes Without A Face(Billy Idol)
09:Let’s Hear It For The Boy(Deniece Williams)
10:Almost Paradise (Love Theme From ”Footloose”)(Mike Reno & Ann Wilson)
11:Oh Sherrie(Steve Perry)
12:Borderline(Madonna)
13:Legs(ZZ Top)
14:It’s A Miracle(Culture Club)
15:Magic(The Cars)

なお、Laura Branigan の真髄はバラッドにこそあるというのが私の持論で、このアルバムにも「Will You Still Love Me Tomorrow」や「Silent Partners」といったバラッドの佳曲がラインアップされているが、彼女のバラッドは実にドラマティックで奥深く豊潤なメロディの楽曲が多く、「How Am I Supposed to Live Without You」のように1980年代を代表するバラッドの名曲も少なくない。彼女のアルバムを聴く際は、ぜひそんな素晴らしいバラッドにも注目して聴いていただきたい。

若くしてこの世を去った Laura Branigan であるが、その人生も含めてどこか憂いを感じさせる薄幸の美人シンガーソングライターであった。

▼ Laura Branigan
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Laura Branigan(Laura Ann Branigan、ローラ・ブラニガン、1957年7月3日生 - 2004年8月26日没)は、アメリカの女性シンガーソングライター、女優である。1982年にプラチナレコードに認定されたヒット曲「Gloria」や U.S.Billboard Hot 100 第4位を記録したヒット曲「Self Control」で知られている。また、U.S.Billboard Hot 100 第7位を記録したシングル「Solitaire」や、U.S.Billboard Adult Contemporary Chart 第1位を獲得した「How Am I Supposed to Live Without You」など記憶に残る数々の名曲をリリースしている。

さらに映画音楽やテレビ番組のサウンドトラックにも楽曲を提供しており、中でも1983年のアカデミー賞受賞映画「Flashdance」や1984年の映画「The Ghostbusters」のサウンドトラック収録曲は有名だ。

イタリア人の作曲家 Umberto Tozzi 作曲による最大のヒット曲「Gloria」は、36週 U.S.Billboard Hot 100 にチャートインし、当時、1982年と1983年と2年連続して U.S.Billboard Hot 100 入りを果たした女性アーティストとしての記録を持っている。

2004年、脳動脈瘤が原因で自宅で逝去。享年47歳であった。

▼ Laura Branigan
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Laura Branigan は、アメリカ合衆国ニューヨーク州ブルースターで、販売員、投資ブローカーであった父 James Branigan,Sr と母 Kathleen O'Hare Branigan の間に5人(兄2人、姉、弟)の子供の4番目として生まれる。両親は後に離婚。兄の James, Jr.は46歳の若さで亡くなっている。なお母方の祖父母はアイルランド人で、祖母の Mary Conway はオペラ歌手、母 Kathleen もラジオ局専属の歌手であった。

ニューヨーク州アーモンクで育ち、高校時代(1966年から70年まで Byram Hills High School に在籍)に高校のミュージカルで主役を演じたことがきっかけで、卒業後の1970年、ニューヨーク市の演劇学校(The American Academy of Dramatic Arts)にウェイトレスとして働きながら通い始める。1972年、Walker Daniels(acoustic guitar)、後にその妻となる Sharon Storm、Chris Van Cleave(acoustic guitar)、Bob Valdez(bass)とともにフォークロックバンド Meadow を結成しヴォーカルを務める。1973年、デビューアルバム「The Friend Ship」とシングルを数枚リリースしたが、適切にプロモートされず、再リリースされることもなかった。バンドは Walker Daniels の自殺を機に解散。以降 Laura Branigan は、このバンドに所属していたことを公式の場で話題にされることを好まなかったと言われている。

バンド解散後の1976年、カナダのシンガーソングライター Leonard Cohen のヨーロッパツアーにバックヴォーカルの一員として参加するなど、様々な仕事に従事する。

1978年12月、その年の初めにニューヨークのマンハッタンのパーティーで知り合った20歳年上の弁護士 Larry Ross Kruteck と結婚(Larry Kruteck は、1996年結腸癌で逝去)。

1979年、Leonard Cohen のヨーロッパツアーを契機に、The Beatles や The Rolling Stones をアメリカに紹介した敏腕プロモーターとして知られる Sid Bernstein と知り合いチャンスを得て、 Atlantic Records の会長 Ahmet Ertegun 直々の働きかけにより Atlantic Records と契約。だがレーベル在籍後の数年間は、ポップシンガーとして売り出そうとするレーベルサイドの意図に反してその歌声の強さと広い音域のため思うようにヒットが生まれず、1981年に未発表アルバム「Silver Dreams」からシングルカットした「Looking Out for Number One」は、かろうじて U.S.Billboard Club Play Singles Chart 第60位を記録。続いて「Tell Him」、「Fool's Affair」と2枚のシングルをリリースするものの、これらのシングルがその後リリースされるデビューアルバムに収録されることはなかった。

その後ディスコミュージックが飽和状態となる中、ようやく1982年3月に本人作曲による「I Wish We Could Be Alone」やイタリアのシンガー Umberto Tozzi が1979年に大ヒットさせた「Gloria」のカヴァーを含むエネルギッシュでアップテンポな4曲とバラッド5曲の計9曲を収録したデビューアルバム「Branigan」をリリース。第1弾シングル「All Night With Me」は、U.S.BIllboard Hot 100 第69位を記録。第2弾シングル「Gloria」は、原曲のアレンジャー Greg Mathieson が仲間のプロデューサー Jack White と組んで、Laura Branigan が「アメリカンキック」と呼んだ新しい英語の歌詞を加えて再アレンジを施したカヴァー曲としてリリース。アメリカのラジオ局は、当初、アメリカとヨーロッパのサウンドが組み合わさった「Gloria」を、当時アメリカのポップミュージックシーンで懸念されていた第2次「British invasion(イギリス音楽の侵略)」の流れを汲む楽曲として積極的に取り上げなかったが、そうした懸念をよそに国内のダンスクラブで大流行したため、結果的にラジオでもヘヴィープレイされ、1980年代を代表するヒット曲となる。こうしてアルバムはゴールドディスクに認定。「Gloria」もアメリカで200万枚以上を売り上げてプラチナディスクに認定された。

▼「Branigan」1stアルバム
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同年、「Gloria」のヒットにより、Linda Ronstadt、Olivia Newton-John、Juice Newton、Melissa Manchester(受賞者)と並んでグラミー賞 Best Female Pop Vocal Performance にノミネートされる。結果的にこれがソロシンガーとしては唯一のノミネートとなる。翌1983年には、楽曲を提供した映画「The Flashdance」のオリジナルサウンドトラックがグラミー賞年間アルバム部門にノミネートされ、見事 The Best Soundtrack を受賞するが、この賞は作曲者のみが受賞対象となるため、残念ながら Laura Branigan 個人としてはノミネート対象とはならなかった。

1983年3月、2ndアルバム「Branigan 2」をリリース。この頃アメリカのミュージックシーンではドラマティックなヨーロッパのシンセポップサウンドの人気が上昇していたことも手伝って、1981年にフランスのシンガーソングライター Martine Clemenceau が作曲、自らリリースしてヒットしたフランス語の楽曲の英語ヴァージョンである第1弾シングル「Solitaire」は、U.S.Billboard Hot 100 第7位、Billboard Adult Contemporary Chart 第16位を記録するヒットとなる。

また、第2弾シングルのバラッド「How Am I Supposed to Live Without You」も、U.S.Billboard Hot 100 第12位を記録するとともに、Billboard Adult Contemporary Chart 3週連続第1位を獲得するヒットとなった。

これらのヒットにより、Laura Branigan はポップミュージックの歴史に名を残すとともに、一発屋ではないことを世に示すことになる。加えて後に音楽界のレジェンドとなる、当時はまだ無名であった「Solitaire」の英語訳を担当した作曲家 Diane Warren と、「How Am I Supposed to Live Without You」の共作者である Michael Bolton にとっても、記念すべき初のメジャーヒット作品となった。

▼「Branigan 2」2ndアルバム
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1983年、映画「Flashdance」に「Gloria」と新曲「Imagination」を提供。「Imagination」はサウンドトラックにも収録され、このサウンドトラックは、グラミー賞を受賞するとともに U.S.Billboard 200 第1位を獲得し、アメリカだけで600万枚以上を売り上げる大ヒットとなった。

▼「Flashdance Soundtrack」
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こうして自身のキャリアの絶頂期を迎える中、女優としても活動。1981年のドイツのテレビ番組「An American Girl in Berlin」への出演を皮切りに、アメリカの人気テレビシリーズ番組「CHiPs」(邦題:「白バイ野郎ジョン&パンチ」)、「Automan」、「Knight Rider」などにも出演。その後もアカデミー助演女優賞受賞俳優 Ruth Gordon 主演の1985年の映画「Mugsy's Girl」やオーストラリア映画「Backstage」に出演。1985年から86年にかけて行った「Hold Me」ツアーのスポンサーであった Dr Pepper、Coca-Cola、Chrysler といった企業の製品キャンペーンのテレビ・ラジオ CM にも出演し、CM ソングを披露している。

ヨーロッパのシンセポップ人気が最好調に達した1984年、3rdアルバム「Self Control」をリリース。アルバムタイトルトラック「Self Control」が、6か国でヒットチャート第1位を獲得し、特に当時の西ドイツでは6週間第1位を記録するなど世界中で大ヒットを記録する。この楽曲の原曲は、1984年初めに共作者の一人であるイタリア人のシンガーソングライター Raffaele Riefoli が Raf 名義で先行リリースし、西ドイツで第2位を記録。数か月後にリリースされた Laura Branigan ヴァージョンはそれ以上にヒットし、U.S.Billboard Hot 100 第4位を記録。同年11月にはアメリカの人気テレビシリーズ番組「Miami Vice」のファーストシーズンの第8話「The Great McCarthy」でも使用された。

このアルバムからは他にも東京音楽祭で世界大会グランプリを受賞した「The Lucky One」、Umberto Tozzi のヒット曲としても知られ Laura Branigan がオーストラリアのヒットチャートで第2位を記録したヨーロッパ調のバラッド「Ti Amo」、ダンスヒット曲「Satisfaction」など、ポップ、ディスコ、アダルトコンテンポラリーと多様なヒット曲がリリースされた。また、ダンスミュージックとは対象的なバラッド曲として Carole King の「Will You Still Love Me Tomorrow」のピアノ演奏を主体としたカヴァー曲も収録されており、この曲をコンサートやテレビで演奏する際は、専ら Laura Branigan 自身がピアノを演奏した。

▼「Self Control」3rdアルバム
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Laura Branigan は、ヴォーカルコーチにオペラ作曲家の Carlo Menotti を迎えるとともに、Guitar では、ロックバンド TOTO の Steve Lukather、ハードロックバンド Giant のメンバー Dann Huff、大御所スタジオミュージシャン Michael Landau を、また Keyboard では、Greg Mathieson、1984年映画「Beverly Hills Cop」のサウンドトラックでグラミー賞を受賞した Harold Faltermeyer、1983年映画「Flashdance」の「Imagination」の作曲家としてグラミー賞を受賞した Michael Boddicker、Bette Midler の主演映画「The Rose」の中でピアノ奏者として出演したこともある Robbie Buchanan を、Bass では、「世界最高峰のベーシスト」と称される Nathan East、Chaka Khan の出身バンド Rufus の Dennis Belfield を、Drums では、Carlos Vega、プログレッシブ・ロック・バンド Jethro Tull の Doane Perr を、Percussion では、日本のミュージシャンともセッション経験の多い Paulinho Da Costa、Lenny Castro を、Guest Vocal では、Joe "Bean" Esposito を、Background Vocal では、The Waters Sisters (Maxine and Julia)、グラミー賞受賞ヴォーカリスト James Ingram、ロックバンド Mr. Mister の Richard Page、同じく Stephen George など、超一流ミュージシャンとアルバム制作等の音楽活動を行う。

こうして自身の才能に磨きがかかり、その成長が認められるようになると、Phil Ramone 、Richard Perry、David Kershenbaum らグラミー賞受賞プロデューサーとも仕事をする機会に恵まれるようになる。また、グラミー賞受賞ラテンポップアーティスト Luis Miguel やオーストラリアを代表する国民的歌手 John Farnham など、異なるジャンルの有名シンガーとデュエットする機会にも恵まれる。

1985年、アメリカの音楽賞の1つ American Music Awards の最も好きなポップ・ロック女性ビデオアーティスト部門にノミネート(受賞者は Cyndi Lauper)。同年、女流作家 Jackie Collins の小説を基にしたテレビ番組の短編シリーズ「Hollywood Wives」のメインテーマを歌う。

同年7月、「Self Control」の大成功の余韻が残る中、4thアルバム「Hold Me」をリリース。シングル「Spanish Eddie」は、自身6曲目となる U.S.Billboard Hot 100 Top40入り(第40位)を果たし、しかも2年半もの間チャートインするロングヒットとなった。続くシングル「Hold Me」は、U.S.Billboard Dance/Club Play Songs Chart 第39位、Michael Bolton 共作で後に Cher のカヴァーでもヒットするロッカバラッド「I Found Someone」は、U.S.Billboard Adult Contemporary Chart で過去最高となる第25位を記録するヒットとなる。しかしいずれの楽曲もミュージックビデオが制作されなかったこともあり、主要チャートである U.S.Billboard Hot 100 では低迷し、アルバム自体も U.S.Billboard 200 第71位と商業的に伸び悩んだ。

▼「Hold Me」4thアルバム
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1987年7月、それまでのアルバム制作と大きく方向転換した5thアルバム「Touch」をリリース。1stアルバムから全てのアルバムをプロデュースしてきた Jack White と決別し、新たなマネージメントと異なる複数のプロデューサーを採用。自身がレコーディングスタジオでより積極的な役割を果たし、イギリスのプログレッシヴロックバンド Monsoon の Bob Mitchell と Steve Coe が作曲、人気プロデューサーチーム Stock-Aitken-Waterman がプロデュースした、ダンスフロアでのヒットを意識した「Shattered Glass」を第1弾シングル曲としてリリース。Dick Clark が司会を務めた音楽番組「American Bandstand」の最終回で最後のゲストミュージシャンとして出演し、この「Shattered Glass」を披露するなどセールスに力を入れた。結果として Billboard Hot 100 では第48位とチャート的には今ひとつ伸びなかったが、U.S. Billboard Hot Dance Music/Club Play Chart では第13位を記録し、狙い通りのヒットとなる。

また 第2弾シングルとしてリリースしたアメリカの女性ポップシンガー Jennifer Rush の「Power of Love」のカヴァーは、U.S.Billboard Hot 100 第26位を記録し、1987年のクリスマスシーズン中の最も売れた20のシングルの一枚となった。だが、後に Stevie Nicks や Jude Johnstone にカヴァーされることになる第3弾シングル「Cry Wolf」は、ラジオ局の注目を集めることなく、アルバム自体も Billboard 200 第87位と低迷する。

▼「Touch」5thアルバム
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1990年3月、自身の名前を冠した6thアルバム「Laura Branigan」をリリース。第1弾シングル「Moonlight On Water」は、ハイエナジーチャートとゲイクラブでヒットし、U.S.Billboard Hot 100 第59位を記録。また第2弾シングル「Never in a Million Years」は、U.S.Billboard Adult Contemporary Chart 第22位を記録する。その他アルバムには、Vicki Sue Robinson のディスコミュージックの名曲「Turn the Beat Around」、Eddie Money のヒット曲「Let Me In」のカヴァー、同年リリースされた Celine Dion の英語によるデビュー CD「Unison」のタイトルトラックのカヴァー、またアルバムのラストトラックに Bryan Adams の「The Best Was Yet to Come」を Laura Branigan 自らがプロデュース・アレンジしたカヴァーと、多くのカヴァー曲が収録されたが、アルバム自体は、U.S.Billboard 200 第133位に終わる。

▼「Laura Branigan」6thアルバム
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1993年8月、名プロデューサー Phil Ramone と共同プロデュースし、自ら作曲・アレンジを担当した7thアルバムにして最後のスタジオアルバムとなる「Over My Heart」をリリース。Brian BecVar との共作による第1弾シングル「Didn't We Almost Win It All」、Cher の楽曲のカヴァーである第2弾シングル「Hard Enough Getting Over You」の他、女性カントリーミュージックシンガー Patty Loveless の「How Can I Help You Say Goodbye」のカヴァー、、スウェーデンのバンド Roxette の「The Sweet Hello, the Sad Goodbye」のカヴァー、スムースなミッドテンポナンバー「Is There Anybody Here But Me?」などを収録したが、アルバム、シングルともにチャートを賑わせることなく、セールス的にも惨敗に終わる。

▼「Over My Heart」7thアルバム
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こうして1993年以降はアメリカ国内でヒットチャートを賑わすこともなくなるが、世界的には人気を維持してワールドツアーを展開。しかし、7thアルバム「Over My Heart」リリース後間もない1994年、結腸癌の診断を受けた夫 Larry Kruteck の看病のため、一時的に音楽活動を休止。その2年後の1996年、夫は逝去している。なお、活動休止中の1995年には、公式ベストアルバム「The Best of Branigan」がリリースされている。

夫が逝去してから5年後の2001年6月にステージ復帰を果たす予定であったが、ニューヨーク州ウエストチェスター郡にある自宅でベッドルームの外に藤をつるす作業中にはしごから転落し両大腿骨を骨折。6か月間の療養を要し、本格的な復帰が遅れることとなる。

2002年、オフブロードウェイのミュージカル「Love, Janis」で Janis Joplin の「singing」を2度披露するが、プロデューサーが俳優組合との手続を怠ったため舞台を降板。後に新聞のインタビューで「正直降板したときはホッとしたわ。だって私の歌声は Janis Joplin らしくないし、19曲も歌わなければいけなかったの。」と語っている。同年、長い間絶版となっていたヒット曲「I Found Someone」を含む2枚目となるアメリカ版公式ベストアルバム「The Essentials: Laura Branigan」をリリース。

2004年8月26日、ニューヨーク州イースト・クオーグの別荘で就寝中に脳動脈瘤が原因で死去。メディアの報道によれば、死の数日前から頭痛を訴えていたが、夫の死から医療への不信を抱いており医者にかかることを拒んでいたとのことである。享年47歳。

(出典:「Laura Branigan」(9 November 2016 07:00 UTC) 『Wikipedia英語版』他)

▼ Laura Branigan
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*この記事は、クリエイティブ・コモンズ・表示・継承ライセンス3.0のもとで公表された Wikipedia の項目「Laura Branigan」を素材として二次利用しています。


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Author:香山蔵之介
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