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2020-05

Daryl Hall & John Oates 「X-Static」

Daryl Hall & John Oates 「X-Static」■ アルバムデータ
タイトル:X-Static
アーティスト:Daryl Hall & John Oates
リリース:1979年
レーベル:RCA Records

アルバム総評価:96
crown01《名音堂 Gold Disc 認定》


■ 曲目リスト
  №  曲          名評      価  MV  
01  The Woman Comes and Goes            ★★★★★  youtube02
02  Wait for Me★★★★★youtube02
03  Portable Radio★★★★★youtube02
04  All You Want Is Heaven★★★★★youtube02
05  Who Said the World Was Fair★★★★★
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06  Running from Paradise★★★★★
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07  Number One★★★★☆ 
08  Bebop/Drop★★★★★youtube02
09  Hallofon★★★★☆ 
10  Intravino★★★★★youtube02


■ 講評
今回紹介するアルバム「X-Static」は、アメリカのブルー・アイド・ソウル・デュオである Daryl Hall & John Oates が1979年に RCA Records からリリースした8thスタジオアルバムである。RCA Records 移籍後としては5枚目のスタジオアルバムとなる。また、2000年には Buddah Records からボーナストラック2曲を追加して再リリースされている。

ちなみに、当時洋楽に当たり前のように付けられていた日本語タイトルは「モダン・ポップ」となっており、日本ではこちらのタイトルの方が馴染みがあるかもしれない。

なお、Daryl Hall & John Oates の詳細については、10thアルバム「Private Eyes」の講評を参照いただければ幸いである。

当時、このアルバムのプロデューサーを務めた David Foster は、Jay Graydon、Bill Champlin とともに作曲した名曲 「After the Love Has Gone」を Daryl Hall & John Oates に提供しようと考えていたが、Daryl Hall & John Oates が自分たちが作曲した以外の楽曲を演奏することに興味を示さなかったことから、結果的に Earth, Wind & Fire の楽曲となったという逸話が残っており、Daryl Hall & John Oates が自分たちで楽曲を作ることに強いこだわりを持っていたことを窺わせるエピソードとなっている。

これを裏付けるように、二人はこのアルバムにおいても全曲の作詞・作曲に関わっており、#1,#2,#7,#9 は、作詞・作曲(ただし#9はインスト)とも Daryl Hall が、#3は、作詞を John Oates、作曲を Daryl Hall と John Oates が、#4,#8 は、作詞・作曲とも John Oatesが、# 5は、作詞・作曲とも Daryl Hall と Sara Allen(Daryl Hall のガールフレンド)が、#6 は、作詞を Sara Allen と Daryl Hall、作曲を Daryl Hallが、#10 は、作詞を Daryl Hall、John Oates、Sara Allen、作曲を Daryl Hall がそれぞれ担当している。

なお、アルバムタイトル中の「Static」は、「電気障害によって起きる雑音」、「空電」、「(空電による)電波障害」などを表す単語であり、大文字の「X」は、「謎の物体X」、「ミスターX」など未知なものを表す名前として使用されることが多いアルファベットであることから、アルバムタイトルの「X-Static」は、差し詰め「怪電波-X」とか「謎のラジオノイズ」のような意味であると思われる。

例えばアルバムジャケットには、水浸しの床に置かれたビニール袋入りのポータブル・ラジオがあしらわれていること、また、収録曲「Wait for Me」のプロモーションビデオでは、そのポータブル・ラジオのチューニング中に偶然「Wait for Me」が流れ出す演出となっていることからも、そんな偶然性や意外性を持ってラジオからノイズに交じって流れてきた音楽の如く「ラジオから偶然聴こえてきた凄くイカした曲」に自分たちのアルバムコンセプトを重ね合わせたのかもしれない。

▼「X-Static」
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▼「X-Static」ジャケット裏面
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▼「X-Static」インナーシート
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▼「X-Static」LP盤ラベル
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アルバムプロデューサーには、前作となる1978年リリースの7thアルバム「Along the Red Ledge」に続いて、前述の人気プロデューサー David Foster を採用。エンジニアは、Daryl Hall & John Oates のアルバムでお馴染みの Ed Sprigg が担当し、レコーディングは、ニューヨークにある有名スタジオ The Hit Factory で行われた。また、ミキシングには、ロサンジェルスにある有名スタジオ Sunset Sound Recorders の Humberto Gatica が参加している。

ポータブルラジオをデザインしたインパクトあるアルバムカヴァーのデザインは、前作「Bigger Than Both Of Us」のカヴァーアートも手掛けた Kathy Hohl が、フォトグラフは、George Nakano が担当。マネージメントは、後に Carly Simon、John Mellencamp、Diana Ross、Taylor Dayne など有名アーティストのマネージメントを数多く手掛けたことでも知られる Tommy Mottola が担当した。

バンドのコアメンバーは、Daryl Hall が Kyboards、Synthesizer、Vibraphone、Mando-guitar、Lead Vocals(#1,#2,#3,#5,#6,#7,#9,#10,#11,#12)、Backing Vocals を担当し、John Oates が Guitar、Lead Vocals(#3,#4,#8)、Backing Vocals を担当。その他のオリジナルメンバーとして、Charles DeChant(Saxophone)、G.E.Smith(Guitar)、John Siegler(Bass Guitar)、Jerry Marotta(Drums)らが参加している。

加えてプロデューサーである David Foster(Keyboards,Synthesizers)を始め、Larry Fast(Synthesizer Programming)、TOTO のメンバーである Steve Porcaro(Synthesizer Programming)、David Foster の盟友 Jay Graydon(Guitars)、John Lennon や Billy Joel のサポートでも知られる Neil Jason(Bass Guitar)、Elton John や Dan Fogelberg のサポートでも知られる Kenny Passarelli(Bass Guitar)、Luther Vandross や John Lennon のサポートでも知られる Yogi Horton(Drums)、Madonna、Bryan Adams、Michael Jackson のサポートでも知られる Jimmy Maelen(Percussion)など、豪華サポートミュージシャンが多数参加している。

Daryl Hall & John Oates は、当時はまだアメリカの音楽専門ケーブルテレビチャンネル MTV が放映されておらず必ずしも一般的ではなかったミュージックビデオ制作にも精力的に取り組んでおり、1980年、このアルバムからも「Wait For Me」、「Bebop Drop」、「Intravino」、「The Woman Comes And Goes」、「Portable Radio」の5曲について Adam Friedman を監督に迎えてミュージックビデオを制作・リリースしている。

ちなみに MTV の放送開始は、アルバムリリースから2年後の1981年8月1日からであり、「Wait For Me」を始め Daryl Hall & John Oates のミュージックビデオも盛んにオンエアされて Daryl Hall & John Oates の成功に大きく寄与することになった。

▼「Wait for Me」Netherlands盤
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▼「Wait for Me」日本盤
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▼「Portable Radio」France盤(Promo)
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▼「Portable Radio」Netherlands盤
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▼「Who Said the World Was Fair」US盤
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▼「Running from Paradise」US盤
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▼「Running from Paradise」UK盤
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このアルバムは、Daryl Hall & John Oates の出世作となる1980年リリースの9thアルバム「Voices」の前年にリリースされたアルバムで、セールス的に失敗に終わった残念なアルバムとしても知られており、1974年から1987年の RCA Records 在籍期間中に Daryl Hall & John Oates がリリースした9枚のアルバムの中で、唯一アメリカレコード協会(RIAA: Recording Industry Association of America)からゴールド、プラチナディスクのいずれにもに認定されなかった売上げ枚数の少ないアルバムとなっている。

ただし、チャート的には U.S.Billboard 200 第33位を記録しており、それ以前のアルバムに比べて極端にランキングが劣るというわけではなかった。ちなみに6thアルバム「Beauty on a Back Street」は第30位、7thアルバム「Along the Red Ledge」は第27位を記録している。

アルバムからは、1979年に「Wait for Me」、「Portable Radio」、1980年に「Who Said the World Was Fair」、「Running from Paradise」の計4曲がシングルリリースされており、「Who Said the World Was Fair」は、U.S.Billboard Hot 100 第110位、「Running from Paradise」は、Billboard Hot Dance Club Songs Chart 第37位、UK Singles Chart 第41位を記録するなどマイナーヒットに止まったが、そんな中 Daryl Hall が作曲、David Foster がプロデュースした「Wait for Me」は、U.S. Billboard Hot 100第18位とメジャーヒットを記録し、アメリカの実演権団体の一つである Broadcast Music,Inc. から BMI Airplay Award を受賞している。

なお、この曲における“Wait for Me”は、「(僕を置いて)行かないでよ。」とか「ちょっと待ってよ。」という意味で使用されており、男の元を去ろうとする女性に男が「僕たちが終わろうとしているのは分かっている。だけど君を愛しているんだ。もう一度チャンスをくれないか。どうか僕を置いて行かないでほしい。」と懇願する切ない男の心情を歌った歌詞となっている。

▼ Daryl Hall & John Oates
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この「X-Static」は、Daryl Hall & John Oates がメジャーのメインストリーム入りを果たすきっかけとなったヒットアルバム「Voices」の前年にリリースした作品であるが、商業的には芳しい成績を残すことができなかったため、「Voices」、「Private Eyes」、「H2O」など、本作以降にリリースされたいわゆる黄金期の名作の影に隠れてしまって、巷では取り上げられることもほとんどない残念なアルバムとなっているようだ。

一方でこのアルバムの失敗を機に Daryl Hall & John Oates は、成功への最も大きな障害が、外部のプロデューサーを採用していることとスタジオミュージシャンたちが自分たちの指向や考えをよく理解していないことにあると考え、活動拠点とレコーディングスタジオをニューヨークに移し、Electric Lady Studios を拠点としてバックバンドを組織し、自分たちのプロデュースによりレコーディングを行って出世作である「Voices」を世に送り出すことになったわけであり、その意味で「X-Static」は、まさにデュオとしてのターニングポイントとなったアルバムとも言えるだろう。

このように概して影の薄い「X-Static」ではあるが、日本では「モダン・ポップ」というタイトルで知られ、その音楽的評価も高く、このアルバムをお気に入りのアルバムに挙げる Daryl Hall & John Oates ファンも少なくない。かく言う私もアルバムリリース当時から Billboard Charts の成績の低さが信じられないぐらい充実したアルバムと感じており、数ある Daryl Hall & John Oates のアルバムの中でも、5本の指に入るぐらいお気に入りのアルバムとなっている。

その魅力は何といっても、それ以前のロック指向なアルバムに比べて格段にリズミックでダンスビートな味付けが濃くなったミクスチャーなサウンドのおかげで、全体に非常にポップでキャッチーなアルバムに仕上がっていることにある。

そしてこのアルバムのポップなサウンドカラーに最も大きな影響を与えたのが、このブログでも常連の人気プロデューサー David Foster であると言われている。

David Foster は、7thアルバム「Along the Red Ledge」に続いて2作連続して Daryl Hall & John Oates のアルバムのプロデュースを手掛けているが、お得意の煌びやかなキーボードアレンジを抑え気味にした分、複雑で層状的なギタメロやコーラスのアレンジにその手腕を存分に発揮して、「Along the Red Ledge」以上によりポップな David Foster 節を炸裂させている感じだ。

Daryl Hall & John Oates は、このアルバムを最後に、自身のプロデュースによりアルバム制作を行うようになったわけであるが、商業的な失敗を外部プロデューサーである David Foster の責任にしながらも、実のところこのアルバムを含め直前の2枚のアルバムを通して、言葉は悪いが David Foster のアレンジの妙やプロデュース術をちゃっかり盗んで自分たちのものにしたのではないかと個人的には推察している。

そうした憶測を裏付けるように、この「X-Static」で開花したポップなサウンドセンスは、確実にその後の Daryl Hall & John Oates サウンドに受け継がれ、明らかに彼らの新たな持ち味にして魅力となっているのである。その意味で、商業的な成否は別として「X-Static」は、「Voices」以降続くヒット街道の足掛かりとなった作品として Daryl Hall & John Oates 本人たちにとっても極めて重要な意味を持った作品に違いない。

▼ David Foster
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さて、アルバム全体を見ると、「モダン・ポップ」という日本語タイトルが物語るように、元来独創的で先鋭的なサウンドというイメージの強い Daryl Hall & John Oates をもって更にモダンと感じさせるポップテイストなサウンドという印象で、Daryl Hall & John Oates のその後の成功を予感させるハイクオリティでインパクトあるアルバムとなっている。

特にそのサウンドクオリティを強く感じさせるのが、シングルリリースされた4曲である。「Wait for Me」については、今更言うまでもなく Daryl Hall & John Oates を代表する1曲として一際輝きを放っているが、それ以外の3曲もキャッチーな乗りの良さでは「Wait for Me」に全く引けを取らない秀逸曲である。

中でもアルバムジャケットのイメージそのままのタイトルの「Portable Radio」は、サビのコーラスの畳み掛けるようなローリング感とポップ感が堪らなくアッパーな要注目曲である。

前述のとおり、このアルバムが持つミクスチャーなサウンドの魅力は、プロデュースを務めた David Foster の手腕によるところが大きいことは間違いないだろう。一方で David Foster といえば AOR サウンドを代表するプロデューサーとして商業主義的なサウンドメイクによるヒット請負人といった印象が強いため、彼のプロデュース作品と聞いただけで拒絶反応を示す洋楽フリークがいるのも事実である。そのため「X-Static」もそうしたイメージで捉えられることが少なくないこともまた事実であろう。

人によっては異論があるかもしれないが、「Wait for Me」の哀愁を帯びたサビメロと Jay Graydon によるイントロの泣きのギターソロなどは、まさに AOR の定番アレンジであり、そうしたそこはかとなく漂う David Foster 独特の AOR な香りが、ロックンロールこそ Daryl Hall & John Oates の生粋のサウンドであると考える結成当時からのファンにとっては、ロックとポップのどっち付かずの軟弱なサウンドとして受け入れ難く、結果的にそうしたアルバムの持つミクスチャー感が、セールス面でマイナスに働いてしまったのかもしれない。

正直それぐらいしかアメリカ本国で売れなかった理由が思い付かないアルバム「X-Static」であるが、日本では間違いなく Daryl Hall & John Oates を代表するアルバム「モダン・ポップ」として、ファンの記憶に残る名盤となっている。

▼ Daryl Hall & John Oates
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■ アルバムリリースノート
1980年代最高のデュオといわれるホール&オーツが大ブレイクする直前の会心作。若きデヴィッド・フォスターがプロデュースしたポップでありながらタイトでファンキーなサウンドは、躍進した80sヒットに直結する好楽曲が多く収録されている。ジェイ・グレイドンによるメロディアスなギターが印象的な「ウェイト・フォー・ミー」は全米18位ながら、その甘美なメロディーとダリル・ホールの情熱的なヴォーカルは本国以上に日本のファンから愛されている。レコーディングにはH&Oのレギュラー・バンドの他、スティーヴ・ポーカロ(key)やヨギ・ホートン(ds)ら敏腕ミュージシャンも参加。- Amazon

RCAでの6作目、通算10枚目のアルバムは、前作に続きプロデューサーにデヴィッド・フォスターを迎え、ポップでリズミカルなロックン・ソウル・アルバムに仕上がっている。このアルバムからはシングル・チャート最高位第18位を記録する大ヒット曲「ウェイト・フォー・ミー」が生まれている。- Amazon

▼ Daryl Hall & John Oates
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*この記事は、クリエイティブ・コモンズ・表示・継承ライセンス3.0のもとで公表されたWikipediaの項目「X-Static」を素材として二次利用しています。


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名古屋音楽堂本舗の店主香山蔵之介による音楽講評です。
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