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2020-05

gomes 「ストラップシューズ」

gomes 「ストラップシューズ」■ アルバムデータ
タイトル:ストラップシューズ
アーティスト:gomes
リリース:2015年11月25日
レーベル:Niw! Records

アルバム総評価:92


■ 曲目リスト
  №  曲          名評      価
01  ストラップシューズ            ★★★★★  
02  モナムール★★★★☆
03  シックな女の子★★★★☆
04  Sincerely★★★★★
05  ステップ★★★★★
06  I am I★★★☆☆
07  ダーリン★★★★★
08  ノクタン★★★★☆
09  邦画みたいな青★★★★★
10  レダザンレッド★★★★★
11  魔法のように★★★★★
12  木曜日★★★★★


■ 講評
今回紹介するアルバム「ストラップシューズ」は、gomes が2015年11月25日に大手インディーズレーベルである Niw! Records からリリースした1stソロアルバムである。

様々なアーティストのバックで活躍してきた鍵盤奏者 gomes の甘く切なくアカデミックなアレンジが際立つ今作は、会場限定などでも CD 販売はあるものの、ソロになってから自身初の全国流通盤となる。制作期間は僅か2か月ということであるが、ロックバンド FAB として2010年にリリースしたアルバム「童景スケッチ」収録曲で AC 公共広告機構の CM にも起用された「魔法のように」の再録を含む全12曲を収録している。

▼「ストラップシューズ」ジャケット
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「古い映画」をテーマとして制作されたという今作では、初のソロ音源として彼の人気の所以となるサウンドクリエーターとしての類稀なる才能と切なくも癒される枯れた歌声を持つヴォーカリストとしての魅力が余すところなく発揮されており、ノスタルジックでどこか甘く切ない、夜が似合う作品に仕上がっている。

FAB 時代のハードなロックサウンドから離れて、自らのアレンジによる管弦合わせて最大で15人編成のアンサンブル「Yota Orchestra」が生み出す全く新しいサウンドは、日本でも人気のあるオランダのシンガーソングライターの最高峰 Benny Sings や、Burt Bacharach などのサウンドを彷彿とさせると巷でも高い評価を受けている。また、繊細なコーラスワークも注目で、力強く伸びやかでソウルフルな歌声で心に響き渡る楽曲が揃っている。

The Beatles に衝撃を受けて独学で始めた音楽キャリアということであるが、音楽に関して全くの無教養でありながら不思議とアカデミックな雰囲気を帯びていて、壮大なスケール感を醸し出すサウンドを生み出しており、このブログでも以前紹介した LUCKY TAPES から田口恵人(bass)、WUJA BIN BIN から上運天淳一(clarinet)、She her her hers から松浦大樹(drums)、ものんくるから吉田沙良(chorus)など、豪華ミュージシャンも多数参加してアルバムの完成度を高めている。

また、アルバム収録曲「魔法のように」のスタジオライブ映像が公開されており、「Yota Orchestra」と名付けられた15人が奏でる演奏の迫力と緊張感が伝わってくるような見ごたえのある映像となっている。

▼ gomes
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▼ Yota Orchestra
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gomes(ゴメス)は、アフロヘアーがトレードマークのミュージシャンである。

2010年 下北沢や新宿を中心にライヴ活動を行う4ピースバンド FAB のキーボード/ギターボーカルとしてアルバム「童景スケッチ」をリリース。収録曲「魔法のように」が2010年度 AC 公共広告機構の CM に起用され話題となる。

その後 FAB の活動休止を経て、ソロアーティスト gomes としての活動を展開。透明感のあるソウルフルでハスキーな歌声が印象的であり、2013年にリリースされた3曲入りのソロ作品集「リトルビットモア」では、キーボードの他に、ギター、ベース、ドラムの楽器演奏も一人で行っている。

自身の活動以外にも、Niw! Records 所属の Keishi Tanaka の鍵盤奏者や、髭、星野源のサポートなど数々のアーティストのライブやレコーディングに参加する他、ケイタイモ(ATOM ON SPHERE、ex.BEATCRUSADERS)を中心に総勢13名で構成されるプログレ吹奏楽バンド WUJA BIN BIN のメンバーも務める等、幅広いジャンルで活躍している注目のアーティストである。

▼ gomes
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そんな gomes がリリースした1stアルバム「ストラップシューズ」は、そのタイトルよろしく女性の足元を写したアート感覚溢れるフォトジャケットが目を引くアルバムだ。

そのジャケットに魅せられて思わず手に取った一枚であったが、冒頭のタイトルトラックにして魅惑のマージービートサウンド「ストラップシューズ」に、不覚にも我を忘れて聴き入ってしまったぐらい予期せぬ掘り出し物であった。

全体としては、60・70年代の香りがする上品かつ上質なポップミュージックアルバムという印象を受けるが、懐かしのシネマで流れるようなジャズ、ボッサノヴァからワルツ、シャンソンに至るまで様々な音楽ジャンルのエッセンスを取り入れながらも、The Beatles や John Lennon のサウンドを彷彿とさせるマージービートを主軸としたサウンドで、gomes が持つ The Beatles 愛がひしひしと伝わってくるような渋いサウンドとなっている。

それを裏付けるようにサウンドメイキングが実に凝っており、十人規模のストリングスとホーンセクション「Yota Orchestra」を加えたライブ感溢れるレコーディングにより本格的にマージービートサウンドを再現しており、gomes というサウンドクリエーターの玄人気質を窺わせるような厚みのある音を作り出している。そのライヴ感溢れる音は、一発録りのセッションから生まれるような雑味と緊張感を伴って聴く者を捕えて離さないグラヴィティを持っているようだ。

こうした豪華サポートを受けて制作された「ストラップシューズ」、「ステップ」、「魔法のように」などの楽曲は、 The Beatles を彷彿とさせる凝ったアレンジで、The Beatles 世代のリスナーにとっては堪らなく懐かしいサウンドに聴こえるに違いない。加えてマージービートを意識しながらも洗練されたアーバンシティポップを感じさせる gomes らしい洒落た味付けのピアノプレイとなっており、彼が狙ったところの古くて新しいポップミュージックを見事に体現しているように感じる。

また歌詞も非常に奥深く抒情的で、「古い映画」を観た後に生まれるノスタルジーに似た感覚を想起させる不思議な魅力を持っており、サウンドと相まって独特な世界観を構築している。

gomes は、今作でまさにソロアーティストとしての才能を開花させたと言えるだろう。バンド全盛の今の時代だからこそ、こうした聴いた後に何とも言えない余韻が残る良質で美しい映画のようなサウンドが若い世代を含めて広く受け入れられることを、このアルバムを通して gomes ファンとなった一人として大いに期待したいものである。

最後に gomes の公式 Web サイトで公開されている彼の音楽観を表した「『美と崇高』に関する考察」とアルバムの「企画書」を転載したい。本人によるアルバムコンセプトの詳細な解説に勝る解説はない、という趣旨で勝手ながら転載させていただいた。今回のアルバムでは歌詞に「魔法」というワードが多く使われているが、その意味も含めて彼の音楽に対する真摯な姿勢に触れていただければ幸いである。

▼ gomes
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「美と崇高」に関する考察

「美しくないからこそ輝くもの」、それが崇高でありロックである。

音楽は魔法だ。美しく、甘く、聴く者の心を奪ってしまう。いまや世界は濮上の音で溢れてしまった。路面店の建ち並ぶ繁華街を歩けば十メートルおきに違う音楽が流れ、その全てが不穏に滲み合っている。「この時代にモノを作ることは、洪水に向かってこれだけは綺麗だからと、新たに水を足しているようなものだ」と敬愛する人は言ったが、まさにその通りだと思う。

社会は僕に美を求めた。あの綺麗な青い炎を見せてと言った。僕は、そんな魔法は本当は使いたくなかったけど仕方なくやってみせた。みんな喜んだけど、あまり嬉しくなかった。

どうして僕は魔法使いなんかになってしまったのだろう。誰よりも魔法が好きなのに、誰よりも魔法が嫌いだ。

だからこそ、崇高なものだけを作りたかった。美しくなくても、正しいものだけを作りたかった。誰よりも鋭く美意識を研ぎ澄ませた上で、その全てを否定してみせたかった。こんなのは何でもないのだと。魔法なんて存在しないのだと。本当は空だって飛べるのに、わざと歩いてみせたりした。自分の中の甘ったるい側面を一切排した上で、それでも残る、色彩の無い不格好でザラザラとした観念みたいなものだけを愛した。

ぼくにとってのロックとは、そういうものだ。20代のゴメスよりロックな奴はいない。そしてそれを説明するのが、これからの僕だ。



企画書

ソロになってから三作目、流通盤としては初となる今作では、ロック色を極力薄めたサウンドにしたい。「童景スケッチ」「リトルビットモア」「レタス」で追い求めたミニマムなバンドサウンド―単色で概念的で崇高なスタイルを捨てて、色彩豊かに音楽の可能性とその美しさに迫りたい。

「古い映画」をテーマとして、アルバム全体を通してノスタルジックで甘く切ない雰囲気にする。(コンセプトアルバムではないので、歌詞がひとつづきのストーリーになっている訳ではない。)

サウンドとしては、弦四部と生ピアノ、綿密に設計されたボーカルを中心に据え、木管五部(フルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴット)と三管のブラス(アルトサックス、トランペット、トロンボーン)またガットギター、シンセベースなどを基調として扱う。加えて、映画制作でいう音響・音効にあたる生活音や環境音の挿入も積極的に行う。

弦カルの音色はジュリアードカルテットの「ドビュッシー/弦楽四重奏」の録音を、三管ブラスの音色はアル・グリーンのアルバム「Let’s stay together」を参考とする。(これらについては「録音・ミックスについての覚書」で詳しく後述する。)

歪んだエレキギター、ハードヒットのクラッシュシンバルなどのロックサウンドは概ね使用しない。

楽曲の半分は過去曲の再録かライブ定番曲で、20代の頃に書いたものだ。今回はそれらを、没入して表現するのではなく、まさに古い映画を見るようにして、客観的に情景豊かに構築したい。

作曲の特徴としては例によって展開の多い楽曲が大半だが、複雑性を目的としている訳ではないので、印象として難しく聴こえないようにしたい。

アレンジに於ける課題としては、歌詞のない、歌と対になるようなメロディーを象徴的に取り扱い、またそれらが楽曲を跨いで登場するようなライトモチーフ風の仕掛けを作ることで、アルバム全体を一本の映画のように表現する。

歌詞については、過去曲が意味の繋がりを軸にストレートな感情を概念的に表現していたのに対して、書き下ろし曲群では意味を横滑りさせながら表層を転がり、その中で色彩豊かに映像的に言葉を積み上げていきたい。色、温度、時間帯、空気感に取り分け注意して、概念や感情だけでなく空間を占める具体物との比率を熟考する。

今作は古き良き名作映画のような世界観をテーマとしながらも現実の当時の映画音楽の模倣を目的としない。管弦アレンジや生ピアノを駆使しながらも、決してマンシーニなどのパロディにならないように注意したい。管はあくまではっきりとした音像で、弦は小編成の特性を活かし各声部が聴こえるように努める。またキーボード、シンセサイザーならではの技法ーーワウの効いたクラビネット、深くリバーブのかかった音色のボリューム奏法、四度積和声の平行移動による濁し、などを積極的に取り入れ、あくまで間接的に象徴的に、そして通俗的に古ぼけた世界観を表現できないだろうか。

ただ単に美しいもの、聴き返すたびに音楽の可能性にときめくような、そんなアルバムにしたい。

gomes

2015.8.20




■ アルバムリリースノート
Keishi Tanakaをはじめ数々のサポートを務める鍵盤奏者、gomesのファースト・ソロ・アルバム。“古い映画”をテーマとした今作は、ノスタルジックでどこか甘く切ない、夜が似合う作品。FAB時代のハードなロック・サウンドから離れ、自らアレンジした管弦合わせて最大15人編成のアンサンブルをバックに、伸びやかでソウルフルな歌声を披露する。AC公共広告機構のCMにも起用された「魔法のように」の再録も収録。- Amazon

▼ gomes
画像




■ Music Video「魔法のように」




■ Music Video「ストラップシューズ」Live at dues 新宿(duestream 1/8配信)




■ アルバム「ストラップシューズ」メイキング映像1




*これらの動画で使用されている音源は、動画を Youtube にアップロードした gomes fromfab が自ら制作したものであり、個人が収入(広告収入を含む)を得ずに運営するサイトへの貼り付けが許諾された音源です。


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Author:香山蔵之介
名古屋音楽堂本舗の店主香山蔵之介による音楽講評です。
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